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ミスドのBGMは“いい感じ”の洋楽ばかり?店内音楽が“心憎い”ワケ

2018/12/05 06:30


アメリカ発祥のドーナツチェーン『ミスタードーナツ』の店内BGMを分析


 ドーナツチェーン店としては日本最大規模の『ミスタードーナツ』。実は、店内で流れているBGMにも隠れファンが多いようだ。SNSでは「ドーナツ屋なのになかなかセンスがあるじゃないか」「いい感じの洋楽で歌ってしまう」「店内のBGMと周りのおしゃべりが適度に心地いい」などの声が。いかにして選曲されているのか?『ミスタードーナツ』広報にコメントをもらいつつ、“心憎い”店内BGMの謎に迫る。

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■6つのプログラムが流れる「ミスド」店内 SNS上でも好評価

 SNS上でも「ミスド」のBGMは度々話題に昇っており、「店内BGMがゴリゴリにウッドベースがきいた曲」「BGMにアルジャロウが流れていて素敵」「テレンストレントダービーの渋い曲のカバー。ミスドのBGMも何気にやるね」など、洋楽好きにも好評価。これら選曲者についてミスタードーナツの広報に質問すると「弊社で定めた5つのテーマに沿って、契約をいたしておりますプランナーに依頼をし毎月提案をいただいております」との答え。とくに特定のミュージシャンにはこだわってないようだが「季節により選曲をいただきご提案いただいております」と、クリスマスやバレンタインなど季節に合わせたものもリストアップされているようだ。
 
 店内で流れているBGMリストの名称は『ミスドクラブミュージックステーション』。今年11月分には洋楽ばかり約100曲がリストアップされており、「THE MORNING SHUFFLE -add good music to your day-」、「ALL-TIME HITS(1)」「Now Hit Parade」「ALL-TIME HIT(2)」「THE P.M.SHUFFLE -add good music to your day-」「THE NIGHT SHUFFLE -add good music to your day-」と、1日のなかで時間帯により6つのプラグラムが設定されている。

 公式サイトには楽曲リストを分単位で掲載。同サービスがスタートした時期については同社にも資料がないそう。しかし「BGMリストを掲載していない時は、お客さまセンターへ『あの時に聴いた曲名を教えてほしい』などの問い合わせが多くございました。そのため、2003年から弊社のホームページに掲載をするようにいたしましたので2003年より前からあったのは確かです」と話す。しかも、日本全国の店舗で同じプログラムが聞けるらしく、選曲は「1970年代以降のヒット曲を中心に選曲しております」ということだ。

■プレイリストを一部紹介 ヒット曲多めながら一筋縄でいかない選曲も

 では11月のプレイリストを一部見てみよう。7:00~10:00の朝にふさわしい最良の音楽を届ける「THE MORNING SHUFFLE -add good music to your day-」では、その1曲目にあるのが、1960年代から90年代に活躍した男性ボーカルグループのビー・ジーズによる「愛はきらめきの中に(How Deep Is Your Love)」だ。1977年のアメリカ映画『サタデー・ナイト・フィーバー』に起用され、全世界のアーティストがカバーする名曲だ。それを日本でも人気がある米ロックバンド・マルーン5のメンバーであるPJ モルトンによるフィーチャリング曲となっており、「誰もが知ってる」と「個性的なグルーヴ感」の合わせ技。一発目から一筋縄ではいかない選曲が心憎い。

 またザ・コーデッツの往年の名曲『ロリポップ』からのジャズピアニスト、バド・パウエル『CLEOPATRA'S DREAM』の流れもアツい。パウエルの(演奏の)トゲがなくなってからの録音だが、それゆえBGMとして、何より朝に聞く音楽として主張が強すぎない感じが丁度よい。ダイアナ・ロスの『TOUCH ME IN THE MORNING』などの大ヒット曲も網羅しており、選曲者の“プロ感”が伺える。

 12:00~13:00と16:00~17:00に流れているのは、あらゆる時代のヒット曲をまとめた「ALL-TIME HITS(2)」。80年代のヒット曲をはじめ、シール、チャーリー・プース、オール・セインツなどによるカバーバージョンが選ばれている。中盤ではデビュー48年目を迎えたギルバート・オサリバンの最新作『GILBERT O’SULLIVAN』を特集。他にも、旬を逃さず、でも名曲もしっかりと聞かせる“心得た”楽曲リストが並ぶ。

(※曲目はすべて11月のリストより)

■店内BGMの意義 “しあわせな時間”がここから生まれる?

 1985年に出版された村上龍氏と坂本龍一氏の共著『EV.Cafe 超進化論』(講談社)で、坂本氏は喫茶店など飲食店で流れるBGMについてこう評している。

「ああいう音楽は(中略)ほかの人間とのコミュニケーションを遮断するために流しているわけ。(中略)音楽がなかったら、隣に座っている人と、何か力関係が生まれる。(中略)例えば、満員電車の中で、ぴったりくっついているわけでしょ。だけど、目を見ないでしょ、しゃべりもしないでしょ。あれはお互いを抑制しているわけだね。(中略)音楽にはそういう機能がある」(坂本氏)

 つまり他者が多く集まる場所において、音楽は、他者を抑制しあって自身の居心地を守る機能がある。音楽が流れているゆえ、他グループと距離が近くても緊張することなく過ごせるし、例えひとりで店を訪れてもリラックスしてその場に“いれる”ということだ。現在はスマートフォンなどでひとり好きな音楽を聞けるためにその限りではないが、かくも店内BGMには重要な役割がある。

 店内で流れるBGMについて、ミスド広報は「幅広いお客様が1日を通してどの時間帯でも気軽に利用でき、“しあわせな時間”を過ごせるミスタードーナツを目指しています」と話す。同社が手がけるプレイリストたちが、その“しあわせな時間”を作る手助けになっているのは間違いない。そこに自社的こだわりを見せる『ミスタードーナツ』。ちょっとした空き時間をあなたの“しあわせな時間”にするため、改めて同店を訪れてみてはいかがだろうか。

(文/衣輪晋一)
記事提供:オリコンNewS
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