"大和魂"で力出し切る
日本の切り札
三都主

待望の代表初ゴールはPKだった。
2日のホンジュラス戦。
代表4試合目の三都主アレサンドロ(清水)にとって、成功と失敗では天と地ほどの差があっただろう。
ひと呼吸を置き、独特の助走から左足でゴール左隅へ。
「PKは運というけど、GKに捕られない場所を狙えば入るんです」昨年11月の日本国籍取得から約半年。
24歳の“新顔"は歓喜の輪の中で青いユニホームの胸にキスし、自分の力で信頼を勝ち取った安ど感をにじませた。
左サイドのスピードと縦への突破力。
トルシエ監督の戦術と規律を時に破壊するような個の力は「もろ刃の剣」の危うさを秘めていた。
しかしW杯年から起爆剤として投入された男は思いのほか、チームに溶け込むスピードも速かった。
そこには16歳でブラジルから高知・明徳義塾高の留学生として来日し、生活や習慣で「日本」を苦労して理解した経験が生きている。
そんな吸収力とバランス感覚こそ、彼の隠れた武器だろう。
「敵を悔しがらせるようなプレーが僕の原点」。
遊び心にあふれたサッカー勘は、1986年W杯メキシコ大会でマラドーナにあこがれてから変わらない。
「W杯はマラドーナやジーコも出た特別な場所だし、自分も“大和魂"で力を出し切る」と夢は膨らむ。
日本名の「三都主」は自らを育てたブラジルのマリンガ、高知、清水の「3つの都に神様がいてくれる」との意味。
スーパーサブでなく、先発への強い思いを抱く日本の切り札は「W杯の神様」も信じている。

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