ママが挑む大舞台1 競泳のダラ・トーレス(米国)

北京五輪に挑むママさん選手は、柔道の谷亮子(トヨタ自動車)だけではない。出産を経験しても頂点を狙う選手は少なくない。
加齢が競技力低下に大きく影響を及ぼすとされる競泳界で、2度の現役引退を乗り越え、ダラ・トーレスは5度目の米国五輪代表を目指す。4月に41歳となる1児の母は「若い選手と競うのは楽しい。14歳のときと同じ喜び」と話し、強豪のそろう6月の代表選考会でも有力候補だ。
衝撃的な復活劇は昨年8月の全米選手権だった。その1年4カ月前に娘のテッサちゃんを出産したにもかかわらず、競泳強国で層が厚い自由形の五十メートルと百メートルを40歳で制した。五十メートルは7年前のシドニー五輪で出した自身の米国記録を0秒10更新する24秒53だった。
17歳で1984年ロサンゼルス五輪に出て、ソウル、バルセロナ五輪にも参加した。その後一線から退き、テレビ番組のキャスターやモデルとして活躍した。ところが「やり残したことがある」と約7年の空白の後に復帰、シドニーの舞台を踏んだ。これまで四百メートルリレーの3個を含めて金メダルを四つ獲得した。
水泳との縁は簡単には切れない。出産後にマスターズの大会でトップ選手と変わらないタイムを出した。AP通信によると「みんなが寄ってきて、40歳代の選手を五輪で見たい、なんて言うんだから。持ち上げられちゃった」と話した。
ニューヨーク・タイムズ紙が昨秋、その五輪挑戦を特集した。薬物の助けがあるのでは、という疑問の声があるのは「分かっている」。昨年何度もドーピング検査を受け、将来の検査に備えて血液も保存したという。そんな姿勢を理解し、復帰を手助けするローバーグ・コーチは「彼女は完ぺきを求めるし、良心の人だ」と評した。

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