ママが挑む大舞台2 クレー射撃の中山由起枝

2年半のブランクを経て復帰したクレー射撃女子トラップの中山由起枝(日立建機)は、心強い「コーチ」を持つ。おもちゃの銃を抱え、練習場によく顔を出す6歳のまな娘、芽生(めい)ちゃんだ。「撃ち終わった空薬きょうを集め、お片付けするのがうちのコーチの役目」と屈託なく笑う。
子育てと競技を両立させる道は平たんではなかった。「子どもが中耳炎になったとか、発熱したと聞けばもう試合にならない」。何回も「これで良かったのか」と考え込んだ。だが最近は、遠征で家を空ける度に泣いていた娘も五輪マークを「ママの目標」と理解して「頑張ってね」と逆に励ましてくれるという。
埼玉・埼玉栄高ではソフトボール部の捕手で高校総体準優勝と活躍した。実業団10社以上の誘いを断り、クレー射撃部を創設した日立建機に入社。21歳で初出場した2000年シドニー五輪は惨敗で泣き崩れた。
「周囲の期待と射撃への恐怖感でもう逃げだしたかった」と翌年に結婚して引退。だが出産して「過去の栄光と、今いる自分のはざま」で自問自答する日々が続いた。離婚もあって落ち込んでいるころ、母のひと言で気持ちが固まった。「子どもに自慢できるママになってみなさいよ」
03年3月、五輪への再挑戦を決め、昨年4月のワールドカップで復活優勝し、日本の北京五輪出場枠も獲得した。29歳の母は「北京で娘にメダルを掛けてあげたい」という夢を胸に秘めている。

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