[写真]ママが挑む大舞台3 フェンシングのバレンティナ・ベッツァーリ(イタリア)

鋭い眼光が際立つ彫りの深い顔が、2歳の息子ピエトロ君の話になると、とろけるように崩れた。北京五輪でフェンシング女子フルーレ個人3連覇を狙うバレンティナ・ベッツァーリ(イタリア)は「子どもにはつい甘くなっちゃうの」と照れ笑いを浮かべた。
五輪は1996年アトランタ大会で銀メダルを獲得し、シドニー、アテネと連覇した。34歳の今も第一線で活躍し、ワールドカップ(W杯)は通算60勝が目前だ。
2005年6月に出産。妊娠中は53キロの体重が20キロも増えた。「普段は毎日5時間は練習するので大量に食べる。休んでも食欲が減らず、太り過ぎて元に戻すのが大変だった」。必死に体を絞り込み、4カ月後の世界選手権で4度目の優勝を遂げた。
子育てをしながらの現役続行は「生活リズムが一変し時間に追われる」が、息子とサッカー選手(セミプロ)の夫が大きな力を与えてくれる。出産して初めての世界制覇で「誇りに思える母親になろうと一層頑張れる」ことを実感したという。
昨年の世界選手権も頂点に立った。女王でい続けることの重圧から解き放ってくれるのもピエトロ君だ。「常に受けて立つという心構えは相当なストレスになる。いつたたき落とされるかと思うと正直怖い。でも息子と過ごす時間は、そんなことを一切忘れられる」
男女を通じてイタリア選手初となる五輪の同一種目3連覇を達成できるか、国内での注目度は高い。「夢をかなえて歴史に名を残したい。優勝すれば、世界中のママたちを勇気づけられると思う」と使命感に満ちた表情で言った。

戻る