「ゴーイング・マイ競技」負けん気で夢の五輪出場 カヌー女子の久野

カヌー・フラットウオーター女子の久野綾香(くの・あやか)(久野製作所)は、先の北京五輪アジア最終予選のカヤックフォア五百メートルで夢に描いた五輪出場を決めた。20歳が四つ目のイスを勝ち取ったのは、予選直前の代表強化合宿だった。「最後の最後まであきらめなかった。自分の力を信じた」と負けん気を見せた。
167センチ、63キロの恵まれた体格を生かして力強く艇を走らせる。福島・安達高2年で全国高校選手権カヤックシングル五百メートル、3年で日本選手権同千メートルを制した。複数の大学から誘いを受けたが「大学はカヌーが終わってからでも行ける。五輪に行くために後悔したくなかった」と競技に専念する道を選択した。
練習拠点の阿武隈川でパドルをこぎ、筋力トレーニングと持久走を日課とした。高校までの自称「ポッチャリ体形」は体脂肪率で8%減少。体幹を鍛え、横揺れの少ないこぎ方が可能となった。
艇に初めて乗ったのは小学3年。兄皓生(ひろき)さん(22)が義足でできる競技として始める時に、母よし子さん(46)に付き添うように頼まれた。だが夏は陽光にさらされ、冬はぬれた髪の毛が凍る。中学卒業時に競技をやめると言った。
おまえには将来性がある、と懸命に引き留めたのが皓生さん。その目は確かだった。「兄が足を失った代わりに五輪が久野家にやって来たと思う」と感慨深げに話した。
もう一つ、五輪切符への原動力があった。サッカー韓国代表のMF朴智星(パク・チソン)だ。努力と負けじ魂で素質を磨き、世界で活躍する姿に感銘を受け、ハングルでファンレターを出したほど。「3通送って返事はないし…。五輪で会えれば」と言って顔を赤らめた。

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