「摘発の舞台裏 ドーピング」五輪本番は最新機器で対応 社会問題としても取り組む

昨年11月、北京五輪のメーン会場から程近い五輪センターで「中国反ドーピングセンター」の開所式が行われた。五輪に合わせて新築された施設の総面積は5500平方メートル。7月末の選手村開村から、これまでで最多となる約4500件の検査を行う予定だ。
清潔な建物の中には、真新しい検査機器が並ぶ。同センターの趙健副主任は「新規購入の機器はすべて最新型。購入費用は3000万元(約4億5000万円)。レンタル機器の費用も3000万元」と説明。資金のほとんどは中央政府が負担した。五輪期間中の検査は普段の10倍ほどの約300件となりそうで、24人の常勤検査員のほか、国外からの20人の専門家を含めて150人態勢を取る。
こうした設備や人員以外でも、中国政府はドーピングを「社会問題」ととらえ、対策を強化している。内閣にあたる国務院は昨年、国家体育総局と関連省庁など11部門からなる「ドーピング問題総合対策チーム」の設立を指示した。
情報産業省はインターネット上での売買、国家食品薬品監督管理局は禁止薬物を含む市販薬の生産や流通、税関当局は密輸といった具合に、各分野で監視を強化。国家体育総局の段世傑副局長は「開催国に課された仕事はラボでの検査だけではない」と話した。
段副局長は「中国を含め、一人の違反者も出さないと保証できる国などない」と言う。検査技術が進歩し、取り組みが強化されても、禁止薬物に手を染める選手は絶えない。中国反ドーピングセンターの趙副主任は「体内に違反物質があれば必ず検出する。泣いて否認しても駄目」と語気を強めた。

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