[写真]「きずな 北京にかける師弟」厳しさと配慮で最強へ レスリング女子の吉田・栄

北京五輪のレスリング女子55キロ級で連覇が有力視される25歳の吉田沙保里(よしだ・さおり)(綜合警備保障)は、今も母校の中京女大で栄和人(さかえ・かずひと)・日本女子監督(48)の指導を受ける。たぐいまれな才能が厳しさと配慮に磨かれ、2度目の頂点に挑む。
頭をそり上げ、練習で怒声を上げる栄は同大の監督でもある。吉田は「ああ見えてすごくマメ。女子ばかりを何十人もまとめて強くするのはすごく大変。細やかでないと無理」と評する。
ことし1月、団体戦のワールドカップ(W杯)で2001年からの連勝が119で止まった。泣きじゃくった吉田は「監督は、わたしよりもショックを受けていたように見えた」と振り返る。栄は、吉田が出る必要のなかった団体戦で喫した黒星に「本人は乗り気じゃなかった。僕が出ろと言ったから」とかばった。
復帰戦となった3月のアジア選手権直前には、緊張のあまり吉田が体調を崩した。青白い顔で計量を済ませたまな弟子に、栄は練習場の隅で温めたレトルトのおかゆを手渡した。「試合前にたいしたことはできないけれど、できることはしてあげたいから」。重圧に立ち向かう教え子を気遣った。
栄が吉田を初めて見たのは高校2年の時。動きは鋭かったが「空振りの多いホームランバッターのようだった」と述懐する。01年の大学入学から2人で“打率十割”のタックルを追求してきた。「相手を腕でさばきながら攻められれば、沙保里はもっと強くなれる」と断言した。(敬称略)

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