「きずな 北京にかける師弟」親子での五輪メダルへ 重量挙げの三宅と父義行

黙々とバーベルに向かう重量挙げ女子48キロ級の三宅宏実(みやけ・ひろみ)(22)=アセット・マネジャーズ=は、父の義行(よしゆき)監督(62)が1968年メキシコ五輪で獲得した銅メダルを見たことがない。「自分で取れ、ということかな」。父と娘は親子二代での五輪メダル獲得を目指し、ともに戦う日々を送る。
ピアノにいそしんでいた宏実の転機は、中学3年生時の2000年シドニー五輪。開会式に「わたしも出たい」と感動した。その可能性を求めるなら、伯父の義信(68)も五輪で金メダルを手にした重量挙げこそがふさわしいと思った。父に「教えて」と頼んだ。
義行は最初は取り合わなかったが、自身が16歳でクリアした42・5キロを挙げた姿に直感した。「世界で戦える。8年後の北京五輪を一緒に目指そう。投げ出したら許さんぞ」と二人三脚を始めた。娘は「練習した分だけ記録が伸びるのが楽しい」と、めきめき力をつけた。構想より4年早く、アテネ五輪に出場して9位。世界選手権は06年に銅メダルを獲得した。
股(こ)関節を痛めて満足に練習できずにいた昨年4月、家出をしようとしたことがある。「温かく包んでほしかったのに、父も慌てていた」と疎ましさを感じたためだ。母の励ましもあって踏みとどまり「開き直れた」。もともと責任感が強く、途中で逃げたくもなかった。
競技は開幕翌日の8月9日。五輪のメダルを自らの手でつかむつもりだ。
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