[写真]「日本のメダル戦略」国内にこもって力蓄える 完全制覇へレスリング女子

アテネで金2、銀1、銅1のメダルを獲得したレスリング女子は今回、4階級完全制覇を目指す。それだけの力があるだけに調整は慎重で、日本協会の富山英明(とみやま・ひであき)強化委員長は「コンディションづくりが第一」を掲げ、国内にこもって手の内を隠す策に出た。
3月、48キロ級の伊調千春(いちょう・ちはる)と63キロ級の伊調馨(いちょう・かおり)(ともに綜合警備保障)が、他国の選手の状況を見たいと海外合宿を希望した。しかし「外に出ても研究されるから」(同委員長)という意見で許されなかった。五輪前にはモンゴル代表が来日するが、一緒に練習しない。メダル奪取に危機感を抱く男子が6月に欧州へ出向くなど、海外の強豪と積極的に交流するのとは対照的だ。
実施種目に採用されたばかりだった前回に比べ海外勢の成長は著しい。72キロ級の浜口京子(はまぐち・きょうこ)(ジャパンビバレッジ)は2003年を最後に世界一になれず、55キロ級の吉田沙保里(よしだ・さおり)(綜合警備保障)は1月、外国選手に初黒星を喫した。それでも日本の優位は変わらないと判断し、じっくりと鍛えた方が金に近いとみた。
6月の合宿にはアテネ五輪男子フリースタイル55キロ級銅メダリストの田南部力(たなべ・ちから)氏をコーチに招き、女子で苦手とする選手が多い寝技を重点的に鍛えた。技術習得は簡単ではないが、藤川健治(ふじかわ・けんじ)コーチは「守るにしても、技を知らなくては無理」と、優勝をより確実にする防御の重要性を説いた。
吉田は日本選手団旗手の候補に挙がったが、競技に集中させたいという周囲の意向で実現しなかった。女子の栄和人(さかえ・かずひと)監督は「派手な勝ち方は求めない。金メダル四つを確信できるまでに持っていく」と万全の調整に徹する構えだ。

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