「日本のメダル戦略」強敵を科学的に徹底分析 柔道、一本にもこだわらず

柔道はアテネ五輪で計8個の金メダルを量産したが、北京では苦戦を強いられそうだ。全日本柔道連盟(全柔連)の吉村和郎(よしむら・かずお)強化委員長は「アテネの前は各階級4、5人をマークすればよかったが、北京は倍以上の選手を研究する必要がある」と判断、強敵を徹底的に分析する策に出た。
全柔連は2005年から外国人選手の映像収集を強化した。国立スポーツ科学センターと連携して映像をデータベース化し、いつでもパソコンで見られるシステムを構築した。
海外遠征には強化委員会の科学研究部が同行し、1大会あたり500―700試合を撮影。蓄積したデータは9000試合近くに上る。階級ごとに有力選手の映像をDVDにまとめてコーチと選手に配布した。
互いに競い合って柔道を世界に広めるという視点から、全柔連はこれまで外国と積極的に映像を交換した。しかし五輪を前に余裕はない。このほどフランスから4月の欧州選手権と、谷亮子(たに・りょうこ)(トヨタ自動車)の映像の交換を求められたが断ったという。科学研究部の佐藤伸一郎(さとう・しんいちろう)特別委員は「世界も日本の情報を欲しがっている。情報戦も熾烈(しれつ)」と話した。
昨秋の世界選手権48キロ級を制した谷の一本勝ちは、アテネ五輪が4試合中3だったのに対し5試合中1。「各国のスタイルが違うので対応しないと勝てない。一本を目指す日本の柔道が正しいとは限らない」と説明した谷に限らず、多くの代表がこの思いを持つ。
日本の神髄は一本を追求する姿勢にあるが、固執しては勝てなくなった。世界の情勢を把握し、適応しようとする意識が頂点への礎となる。

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