08/04 13:08

満員の観衆で埋まった競技場に2選手がほぼ並んで戻ってきた。
小柄なアベラと長身のビウォットの距離が開いたのは、ゴールまで200メートルに迫ってから。
42キロを走ってきたとは思えない足取りでアベラがすっと前に出た。
大舞台での勝負強さは抜群だ。
昨年のシドニー五輪ではやはり終盤の競り合いを制し、金メダルに輝いた。
今大会のコースはシドニーほどではないものの、22キロすぎに急な下りがあり、V字の底からすぐに上りになる。
終盤にも小さなアップダウンがある。
中盤の下りで抜け出したエルムージズ(モロッコ)を自らペースアップして30キロすぎでとらえ、終盤も常に主導権を握った。
40キロ地点手前でのスパートをビウォットに一度は追いつかれながら、最後でまた突き放した。
自在にペースを上げ下げするしたたかな走りは、五輪後さらに磨きがかかった。
ゴール後はエチオピアの国旗にくるまり、童顔を輝かせた。
まだ23歳。
伝説の名ランナー、アベベ・ビキラを生んだ国の若者が、偉大な先輩にまた一歩近づいた。

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