08/06 10:33
【エドモントン(カナダ)5日共同】最後の6投目。
スタンドの手拍子が降り注ぐ中、ひときわ速い回転から放たれたハンマーは80メートルの白いラインを越えた。
しかし室伏広治選手(26)=ミズノ=の顔に不満の表情が浮かぶ。
ジオルコフスキ選手(ポーランド)の83メートル38には届かず、銀メダルが決まった。
熱戦となった5日(日本時間6日)のエドモントンでの世界陸上選手権男子ハンマー投げ。
室伏選手は父と一緒に追い求めた技術で表彰台をつかんだ。
海外の大男たちとの体格差を埋めようと、従来より1回転多い4回転投法を世界に先駆けて取り入れた父、重信さん(55)。
アジア大会5連覇の「アジアの鉄人」を、室伏選手は「長い間、1人で練習してきて、正しいことを見つけて進んできた。
これはすごい」と敬意を払う。
ベースにあるのは父の4回転投法。
助言を得ながら室伏選手は技術の質を高める努力を続けてきた。
28年間も父が名乗った日本記録保持者の称号を受け継いだ1998年。
高速でターンをしながら、進行する方向に一瞬、背中を傾け、回転面を大きくしてハンマーの遠心力を高める独特の「倒れ込み」の技術を取り入れたときも、最後は自分自身の判断だった。
父は息子を支え続けた。
今大会直前の記者会見では同席してスポークスマン役を務め、息子をメディアの重圧から守った。
室伏選手は健闘の握手をかわすと、日の丸を肩にかけ、ポーランド国旗をまとうジオルコフスキ選手と並んで、笑顔でウイニングランに飛び出した。
その様子をスタンドからうれしそうに見詰める重信さん。
2人でつかんだ銀メダルだった。
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