08/06 11:42

最終の6投目。
高速の4回転ターンから放たれたハンマーは、逆転の夢を乗せ80メートルのラインを越えて中央やや右に落ちた。
82メートル61。
自身の5投目82メートル92も、ジオルコフスキの83メートル38も越えることはできなかった。
それでも、立派な銀メダルだ。
2投目に82メートル46でトップ。
十分に優勝可能な好記録だったが、シドニー五輪優勝者はそれを5投目に逆転した。
高レベルの争い。
「彼は大会新。
自分もこのところの大会の優勝記録よりもいい」と室伏は胸を張った。
メダルを期待されたシドニー五輪は9位。
それが大きな転機となった。
1投目のファウルが響いたと反省し、方向性を重視する練習を徹底して繰り返した。
父の重信コーチは「シドニー前にもそう言っていたのだが、本人はあまり聞かなかった。
でも失敗で変わった」と振り返る。
400キロもの負荷に耐えながら、高速の回転を繰り返すなかで、常に同じ方向にハンマーを放つのは至難の業だ。
ひと冬越え体得。
春から日本記録を連発し7月には83メートル47まで達した。
「ベスト記録が上がったのは、自信を持って試合に出られることにつながる。
変な余裕でなく、きょうはうまくかみあってくれた」と室伏。
この日は1投目にベスト8進出が可能な79メートル91をマーク。
勝負をしかけた2回目からはすべて81メートルを越える、真に世界最高レベルのシリーズを残した。
技術を追求し続ける「鉄人」は「精いっぱいやった。
力を出し切れた」と言い切った。
メダルの色を超えた充実感が、確かにあった。

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