03/28 07:53
「苦しい時期を乗り越えると人間は強くなる」。
所属するイタリア1部リーグ(セリエA)パルマで出番が少なくなったことし初め、中田英はイタリア紙のインタビューにそう答えた。
日本がポーランドに快勝した試合で、日本のエースはその言葉を証明。
ワールドカップ(W杯)に向けて膨らんでいた「ヒデへの不安」を吹き飛ばした。
前半10分、右サイドの市川からのクロスを相手DFがクリアしたところに猛然と走り込んだ。
先制ゴールに「こぼれ球にちゃんと詰めた。
あとは思い切りけっただけ」と中田英。
敵地でしかも悪いピッチ。
不利な試合の主導権を序盤で日本にもたらした。
積極的に相手選手にプレスをかけボールを奪いキープ。
そして右サイドの市川らに好パスを配給し続けた。
司令塔として存分にピッチを駆け回る。
味方選手への指示も目立った。
福西と戸田を呼び寄せ厳しい口調で迫る場面も。
小野には「ボールを持ったときの相手の崩し方など」(小野)をアドバイスした。
これまで「彼は私の実験室を経ていない」「不動のレギュラーではない」などと、むしろ不安感の“あおり役"だったトルシエ監督も「チーム戦術に献身的にプレーした。
彼の動きによってわれわれのオートマティズムの幅が広がる」と手放しで褒めた。
パルマでは、おそらくサッカー人生最大の試練に立たされている。
メディア、ファンの批判を浴び、首脳陣の信頼を失いベンチへ追いやられた。
しかし、チームが検討した放出を、中田英はきっぱり断った。
あえて真正面からこの困難に立ち向かうことを選んだ。
トルシエ監督は孤高のエースについて「以前は5人のマネジャーと2人の医者を従えヘリコプターでやって来た。
だが今は、ひとりで自転車に乗ってくる」と面白い比ゆで、精神面の成長を認めた。
本人は、心の内について多くを語らない。
周囲の不安に対しても「(言葉で)答える必要はない」と言い切る。
なぜなら中田英のやり方は「その場、その場で結果を出すこと」だからだ。
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