ロシア(中)

のどかな丘陵地帯に囲まれたスペイン北部のオビエド。
昨季までスペイン1部リーグだった同クラブ(今季2部)で7年間プレーするロシアの鉄人、32歳のDFオノプコ主将は、この地で「リベンジ」の言葉を胸に自身2度目のワールドカップ(W杯)に備えて黙々と練習に励んでいる。
同国最多の94キャップを誇り、代表の精神的な支柱として約8年間も主将を任されてきた。
しかし、1994年ワールドカップ(W杯)米国大会は苦い記憶でしかない。
「サッカー選手にボイコットなんて言葉はないはずなのに。
公務員じゃないのだから」。
監督と選手の対立、金銭面のトラブル…。
内紛は8選手のボイコット騒動に発展し、空中分解したチームは1次リーグで敗退した。
「当時はまだ共産政権下の考え方が残っていた政府が、選手に背後から圧力をかけて混乱に拍車を掛けていた」とロシア連盟のラジノフ専務理事(63)。
しかし暗黒の時代は終わった。
オノプコは8年ぶりの舞台に「今度はサッカーを楽しみ、チームを本当の家族にしたい」と力を込める。
もう1人のベテラン、33歳のモストボイも時代の激流に飲まれたチームを見つめてきた。
「ソ連崩壊後の10年の混乱は簡単に事情を説明できるものではない。
94年W杯も選手が4グループに分かれて対立し、散々な思い出しかないんだ。
でもサッカーだけに集中できる今回は自信がある」スペイン1部リーグのセルタで「皇帝」と呼ばれるロシアの天才MF。
敵地に乗り込めばブーイングの集中砲火を浴びる異彩な存在感を放ち、一発のパスで試合を決める技は健在だ。
99年にパリで世界王者のフランスを3-2で粉砕した実績もある。
ベテラン2人が攻守で支えるロシアには、逆境を乗り越えた強さがある。

⇒下へ
戻る