ロシア(下)
国内最古の歴史を持ち、陸軍のクラブとしてソ連時代に黄金期を築いたチェスカ・モスクワは近年、国外資本の投入でロシア・リーグの革命的な存在になりつつある。
「あと3、4年でロシアのサッカー市場は爆発する」。
荒れ地に昔の大砲や軍用機が雑然と放置された旧競技場内で、25歳と若いボグシュ報道官は期待感を示した。
クラブの株式構成は、昨年から英国とオランダの合弁会社が筆頭株主(49%)となり、これまで管轄してきた国防省は25%の所有に大幅減。
市民の平均月給が約1万円といわれる社会で、今オフは30億円を投じて10人の戦力を補強した。
この夏には、ドイツの会社に依頼した4万人収容の新競技場建設が着工される。
「目標はマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)」と同報道官。
市場経済化の波に乗ってクラブの西欧化を目指す。
元ソ連代表GKで解説者のマスラチェンコ氏(65)は、大半のクラブがまだ公的機関に頼った現状に「真のプロリーグではない」と手厳しいが、国内リーグの活性化は新たな流れも生んでいる。
一時は最高で約400人も国外に流出した選手の多くがロシアに戻り、現在はアフリカや南米からも200人近くを受け入れる。
選手の年俸は“国家秘密"だそうだが、国内トップ選手のチトフならスペイン・リーグの主要選手と大差ないという。
19歳の代表ホープ、イズマイロフが7歳で入学したソ連時代の「青年サッカー学校」も現在はプロチームの下部組織。
ソ連崩壊後のクラブで育った才能に国民は新しい希望を見る。
ロシア連盟もワールドカップ(W杯)出場の追い風を受け、韓国のLG電子など4社とスポンサー契約を結んだ。
ワールドカップ(W杯)で日本と対戦するロシア代表は、変ぼうする国内サッカー界全体から刺激を受けている。
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