ﾋｰﾛ伝説

ﾘﾊﾞｳﾄﾞ(ﾌﾞﾗｼﾞﾙ)
魔法のような左足､冷遇はね返したｴｰｽ

ﾌﾞﾗｼﾞﾙが苦しみ抜いた2002年ﾜｰﾙﾄﾞｶｯﾌﾟ(W杯)南米予選｡孤軍奮闘した長身の攻撃的MF､ﾘﾊﾞｳﾄﾞは昨年10月7日のﾁﾘ戦(ｸﾘﾁﾊﾞ)でも1点を挙げて勝利に貢献し､予選突破をほぼ確実にした｡地元の観衆から大喝さいを浴びたﾘﾊﾞｳﾄﾞは､感激を隠せなかった｡
｢代表のためにﾌﾟﾚｰして､称賛されてﾌｨｰﾙﾄﾞを後にするのはこれが初めてだ｡本当にうれしい｣
魔法のような左足のﾎﾞｰﾙ扱い｡中盤からの高速ﾄﾞﾘﾌﾞﾙで相手守備網を切り裂き､長い足を生かした強烈なｼｭｰﾄで得点を量産してきた｡大きく曲がってﾈｯﾄを揺らす直接FKも､ｵｰﾊﾞｰﾍｯﾄﾞ･ｼｭｰﾄのようなｱｸﾛﾊﾞｯﾄ的なﾌﾟﾚｰもお手のもの｡
▽悲しげな背中
ところが､地方出身者ということもあってか､自国のﾌｧﾝやﾏｽｺﾐから冷遇されてきた｡ｽﾍﾟｲﾝの強豪ﾊﾞﾙｾﾛﾅで名声を確立してもなお背中が悲しげに見えたのは､内向的な性格だけが理由ではない｡
1996年ｱﾄﾗﾝﾀ五輪準決勝のﾅｲｼﾞｪﾘｱ戦で自身のﾐｽから失点｡逆転負けのきっかけをつくったと､戦犯扱いを受けた｡98年W杯ﾌﾗﾝｽ大会では本領を発揮しながら､決勝では突如体調を崩したﾛﾅｳﾄﾞをｶﾊﾞｰできなかったと失望された｡持ち味の強引なﾄﾞﾘﾌﾞﾙも､個人ﾌﾟﾚｰとの批判を招きがちだ｡
だからこその､ﾁﾘ戦後の言葉である｡代表への献身的なﾌﾟﾚｰで､ついに国民の支持を勝ち取ったという沸き上がる喜びだった｡
▽行商とｻｯｶｰ
ﾘﾊﾞｳﾄﾞは､ﾌﾞﾗｼﾞﾙ北東部ﾚｼﾌｪ市の貧困地区に生まれた｡少年時代は放課後､父ﾛﾐｳﾄﾞさんとお菓子などを行商しながら､ｻｯｶｰにのめり込んだ｡
16歳だった89年1月､父が交通事故死｡浜辺やｻｯｶｰ場で飲み物を売って家計を助け､地元ｸﾗﾌﾞ､ｻﾝﾀｸﾙｽのﾕｰｽでﾌﾟﾛを目指した｡ﾊﾞｽ代を節約するため､練習場までの25ｷﾛを歩いて通った｡
1軍に昇格し､ﾌﾟﾛとなる夢を実現したのは18歳の91年｡93年夏には強豪ｺﾘﾝﾁｬﾝｽ入りした｡12月には代表ﾃﾞﾋﾞｭｰをﾒｷｼｺ戦で果たし､自らのｺﾞｰﾙで勝利を飾った｡
▽異国でﾌﾞﾚｰｸ
しかし94年W杯の代表からは漏れ､96年には五輪での屈辱｡直後にﾃﾞﾎﾟﾙﾃｨﾎﾞ･ﾗｺﾙﾆｬ移籍のためｽﾍﾟｲﾝに飛び立ったのは､雪辱を期しての逃避行だったかもしれない｡そして異国で大ﾌﾞﾚｰｸした｡
ﾃﾞﾎﾟﾙﾃｨﾎﾞでのｽﾍﾟｲﾝﾘｰｸﾞ1年目に21点をﾏｰｸ｡翌97年には欧州屈指の強豪ﾊﾞﾙｾﾛﾅに引き抜かれ､最初の2ｼｰｽﾞﾝでﾘｰｸﾞ計43点を挙げて2連覇に貢献した｡
この活躍が認められて代表に復帰｡98年W杯では栄光の10番を着けて3得点を挙げ､国際ｻｯｶｰ連盟(FIFA)の大会ｵｰﾙｽﾀｰに選ばれる活躍を見せた｡今回のW杯南米予選ではﾁｰﾑ最多ﾀｲの通算8得点と､今や王国の期待を一身に背負っている｡
本人も､中心選手の自覚と責任感が芽生えてきた｡｢ｱﾄﾗﾝﾀ五輪もﾌﾗﾝｽでのW杯も過去のこと｣｡ﾌﾞﾗｼﾞﾙが持つ優勝4度の最多記録更新に向け､すべてを出し尽くす決意だ｡(共同=名取裕樹)

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