ﾋﾞｴﾘ(ｲﾀﾘｱ)
南半球育ちのｽﾄﾗｲｶｰ､驚異的な決定力誇る
ｲﾀﾘｱ代表の記念すべき通算1000ｺﾞｰﾙは､1997年3月29日､ｲﾀﾘｱ北部のﾄﾘｴｽﾃで生まれた｡ﾓﾙﾄﾞﾊﾞとのﾜｰﾙﾄﾞｶｯﾌﾟ(W杯)ﾌﾗﾝｽ大会予選｡後半4分､初代表のｸﾘｽﾁｬﾝ･ﾋﾞｴﾘが左足でﾏｰｸした｡
▽強運の代表ﾃﾞﾋﾞｭｰ
800点目はﾊﾟｵﾛ･ﾛｯｼ､900点目はｻﾙﾊﾞﾄｰﾚ･ｽｷﾗｯﾁ(元Jﾘｰｸﾞ磐田)と､いずれもW杯で得点王になったｽﾄﾗｲｶｰが記録している｡ﾋﾞｴﾘは強運も感じさせる鮮烈ﾃﾞﾋﾞｭｰで代表ｴｰｽの座をつかみ取った｡
初出場した98年W杯ﾌﾗﾝｽ大会でもさっそうとしていた｡1次ﾘｰｸﾞは3試合で計4得点｡決勝ﾄｰﾅﾒﾝﾄ初戦のﾉﾙｳｪｰ戦でも､決勝ｺﾞｰﾙを決めて5得点目｡しかしﾌﾗﾝｽとの準々決勝では0-0のままPK戦で敗れ､得点王の夢も消えた｡
ｲﾀﾘｱはこれで3大会連続PK戦負け｡｢なぜだか分からない｡ﾌﾗﾝｽの何かが自分たちより上回ったのかもしれない｣と振り返るﾋﾞｴﾘはﾋﾟｯﾁの上で相手のｴｰｽ､ｼﾞﾈﾃﾞｨｰﾇ･ｼﾞﾀﾞﾝに慰められ､肩に顔を埋めて泣いた｡かつて所属したﾕﾍﾞﾝﾄｽの僚友だった｡
▽ﾗｸﾞﾋﾞｰ育ち
父ﾛﾍﾞﾙﾄさんは70年代に活躍した元ﾌﾟﾛで､選手生活の晩年にｵｰｽﾄﾗﾘｱのｸﾗﾌﾞに移籍した｡このため､ﾋﾞｴﾘは少年時代を南半球ですごし､ﾗｸﾞﾋﾞｰにも親しんだ｡肩をいからせ突進する姿は､どこかﾗｸﾞﾋﾞｰのFWを思わせる｡持ち前の闘争心は､ｻｯｶｰと同じ起源を持つこのｽﾎﾟｰﾂで養われた｡
82年W杯ｽﾍﾟｲﾝ大会での母国の優勝をﾃﾚﾋﾞで見た｡｢格好いいなあと思った｡子供はだれでもｻｯｶｰをしたらｾﾘｴAにあこがれ､代表に入ってW杯に出たいと夢見るもの｡ｵﾚも同じだった｣｡決勝戦が終わったのは､時差のあるｵｰｽﾄﾗﾘｱでは7月12日の未明｡ﾋﾞｴﾘ9歳の誕生日だった｡
14歳で母国へ戻り､父と同じ道を目指した｡当初は祖母のもとに預けられたが､英語で育ったために母国語にも苦労し｢いつも泣いてばかり｡毎日､父に電話をしては､帰りたいと訴えていた｣と懐かしむ｡
▽｢さまよい人｣
16歳で3部ﾘｰｸﾞのﾁｰﾑとﾌﾟﾛ契約｡その後､計9ｸﾗﾌﾞを渡り歩いた｡95年､ｾﾘｴAのｱﾀﾗﾝﾀで頭角を現し､ﾕﾍﾞﾝﾄｽを経て97年にはｽﾍﾟｲﾝのｱﾄﾚﾁｺ･ﾏﾄﾞﾘｰﾄﾞに移籍｡ﾘｰｸﾞ戦24試合で24得点という驚異的な決定率で､初のｲﾀﾘｱ人得点王に輝いた｡
その後､ｾﾘｴAに戻りﾗﾂｨｵから､99年夏にはｲﾝﾃﾙ･ﾐﾗﾉに当時世界最高の移籍金900億ﾘﾗ(当時約59億円)で加入｡欧州各ｸﾗﾌﾞを転々とした｢さまよい人｣は､ようやくｲﾝﾃﾙに安住の地を見つけたのか､今季で3ｼｰｽﾞﾝ目を迎えている｡
98年W杯後は､度重なる故障に苦しんだ｡2000年欧州選手権も負傷で棒に振った｡それでもﾋﾟｯﾁに立てば抜群のｺﾞｰﾙ決定率は相変わらず｡今季のｾﾘｴAでも昨年11月中旬に復帰し､15試合で15点｡代表にもｶﾑﾊﾞｯｸした｡
W杯でも､こんなﾊｲﾍﾟｰｽが実現できるか｡ｲﾀﾘｱの攻撃力は､ﾋﾞｴﾘがいてこそ完成するとの評に｢ｵﾚもそう思うさ｣と不敵な笑みを見せた｡(共同=名取裕樹)
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