06/04 21:48

1年前と同じ雄たけびを上げた。
1点を許した直後の後半14分。
鈴木は自陣左の小野から守備ライン裏へのロングパスを、あきらめずに追った。
並走するバンミールに体をぶつける。
目の前にボールがこぼれた。
右足を伸ばし、つま先に当てた。
日本の劣勢を跳ね返す同点ゴール。
今季、鹿島の公式戦、日本代表の8試合で得点がなかった男が大仕事をした。
「感激した。
(代表初ゴールの)コンフェデ杯と比べて絶対に成長している」と胸を張った。
「苦しい時間帯で気持ちを入れ替えてやろうと思っていた。
運が良かった」と話す姿は、普段の冷静さを取り戻していた。
相手を背負い、体を張って前線で踏ん張るプレースタイルは、きれいにパスを回すチームにあって異質な存在だ。
簡単なミスも多い。
鹿島関係者は「隆行は下手だから」と代表の主力となった今でも言う。
自分でもかつては「どこが抜け出しているのか、そういう点での自信はない」と話した。
だが、鈴木には向上への渇望がある。
プロ入りして周囲のレベルにがくぜんとし、鹿島で定位置を取れそうで取れないと移籍。
ブラジル、日本のクラブを渡り歩いて得た結論は、ゴールに最も近い位置にいるFWとしての責任感だ。
「周囲と絡んでなくてもいいし、こぼれ球を決めるだけでもいい。
点数を取らないと勝てないスポーツで、FWとしての責任は得点にかかわること」今年の公式戦で一度もゴールがなくてもトルシエ監督は鈴木を中心的存在に起き続けた。
体力と、コンフェデ杯のカメルーン戦で見せた獲物を狙う眼を信じ続けた。
鈴木は激戦を終えて帰り着いた袋井市の宿舎で5日、26歳の誕生日を迎える。

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