06/09 22:29
3戦全敗したフランス大会から4年。
日本はW杯で歴史的な初勝利を果たした。
決勝会場でもある横浜国際総合競技場の巨大スタジアムが興奮と歓声で揺れた。
共催国の韓国は6度目の出場で半世紀に及ぶ敗北の歴史に終止符を打ったばかり。
それだけ重い扉を日本が2度目の出場でこじ開けた。
地力は9度目の出場で経験豊富なロシアが上だった。
洗練されたパスサッカー。
高さも競り合いの強さもあった。
だが、日本は4年間で積み上げた組織力に闘う姿勢を備えていた。
開催国としてW杯1次リーグ敗退は前例がない。
そんなホスト国の重圧をチームの結束力ではねのけた勝利でもあった。
大会前、選手の多くはW杯の1勝を「通過点」と話していた。
「サッカー選手としてステップアップする一つの過程だ」と言う選手もいた。
W杯の舞台を夢見た時代を超え、たくましさを増した選手はその先を見つめている。
ベルギー戦でゴールを決めた鈴木の目つきは一段と鋭さを増していた。
「自分へのプレッシャーはずっと続いている」。
大会前は不振だっただけに、ゴールへの渇望がかえって増していた。
4年越しのW杯で夢を実現させたチーム最年少の市川も「今まで入ることを許されなかった場所で背中の後押しを感じる。
ロシア戦は勝ちにいかなくてはいけない試合」と、すっかり戦う男の顔になっていた。
長らくアフリカを渡り歩いて「白い呪術師(じゅじゅつし)」の異名があるトルシエ監督にとっても、記念すべきW杯初勝利だ。
前回大会は南アフリカを率いて2分け1敗。
「4年前の経験と今回のW杯は全く関係ない。
教訓は何も結び付けて考えられない」。
開催国の監督として手塩にかけて育てた「門下生」とつかんだ1勝は格別だろう。
1勝1分けで勝ち点4。
目標のベスト16への道は大きく開けてきた。
リーダーの風格が漂う中田英を軸に23人は一つになっている。
ベテランの中山と秋田もチームを根底から支える。
ベルギー戦の初勝ち点から5日。
日本は1954年スイス大会予選に初参加以来、ほぼ半世紀の挑戦史を経て世界に大きなステップで踏み出した。
記事一覧