06/14 19:28
電光石火の一撃だった。
後半から登場してわずか3分後。
神出鬼没の「小さな巨人」が重苦しい空気を吹き飛ばした。
「とにかくうれしい。
それだけです」。
ネットを揺らしたボールを見届けると、両手を広げた歓喜のポーズで一目散にベンチの仲間へ突進した。
この瞬間を待っていた。
地元のスタジアム。
雪辱を期した2度目のW杯。
後半のキックオフと同時に、敵陣まで飛び跳ねるように走り込んだ。
「敵も疲れていたし、いい形で入れた」。
その直後、相手DFのクリアがゴール前にこぼれる。
特異なきゅう覚はこのチャンスを逃さなかった。
前進しながら体を反転させた右足のシュート。
「思い切ってけったら、いいところに飛んでくれた」。
まさに真骨頂のゴールだった。
スペースの使い方、作り方は天下一品だ。
パスの受け手として「使われる天才」と称されることもある。
168センチの背番号「8」がピッチに入ると、前半は停滞していた日本の攻撃が流れるようなテンポを取り戻した。
8分、市川の右クロスに森島がダイビングヘッドで飛び込む。
体のひねりを加えた絶妙のシュートはポストにはじかれたが、完全にペースを引き寄せた。
4年前のW杯は11分間の出場で「流れを変えられなかった」と悔やむ。
この間、体に異変が起き、オーバートレーニング症候群で1カ月の完全休養を強いられた時期もある。
度重なる負傷にも苦しんだ。
それでも「自分の役割が急に変わるわけではない」と最高の舞台でも“無駄走り"を忘れずピッチを駆け回った。
試合後のロッカールーム。
チームメートから「モリシ」の愛称で親しまれるベテランは後輩からも手荒い祝福を受けたという。
「いい雰囲気で盛り上がった。
やっと一つ仕事ができました」。
トルシエ監督も「チームの切り札として試合の流れを大きく変えてくれた」と賛辞を贈った。
国際Aマッチ63試合目で12ゴール。
「僕のゴールはともかく、全員で一つになっていきたい」。
30歳のチャンスメーカーが決勝トーナメントでも獅子奮迅の働きで日本の切り札になる。
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