04/23 14:11

米ニュージャージー州イーストラサフォードのジャイアンツスタジアム。
3月23日、プロ・サッカーリーグ「メジャーリーグ・サッカー(MLS)」の地元メトロスターズとレボリューションがシーズン初日の勝敗をかけて対戦した。
土曜の夜なのに8万人収容のスタジアムの観客は約1万人。
空席ばかり目立つ寂しい幕開けとなった。
▽「金の成る木」の例外米国はサッカー不毛の地として世界のファンから酷評されてきた。
アメリカンフットボールの圧倒的な人気に押され、低迷を続ける米国サッカー界。
日韓共催のワールドカップ(W杯)も多くの人は知らず、関心もほとんどない。
そもそも、まともなサッカー場がない。
1994年に米国で開催されたW杯もアメフト専用競技場で行われ、世界のファンを嘆かせたほどだ。
96年にスタートしたMLSも客が入らず、昨シーズン後に2チームが削減、計10チームになった。
大リーグはじめNFL(プロフットボール)、NBA(プロバスケットボール)といった「金の成る木」をどん欲に一大ビジネスにしてしまう米スポーツ界。
その例外がサッカーなのだ。
サッカーの「王様」ペレは米国でのW杯後、米紙ニューヨーク・タイムズに「サッカーは(米国で)認知されたことになるが、ビジネスになると話は別だ」と述べた。
その後は「王様」の予言通りの展開となった。
テレビで中継を楽しめず、新聞のスポーツ欄にも記事はほとんど見かけない。
少数の熱狂的ファンはさぞ肩身の狭い思いをしているはずだ。
そんな人々が集まるアイリッシュ・バーがニューヨークのマンハッタンにあった。
▽少数ファンの聖地「ウォー」。
ビールのジョッキを片手に男たちが歓声を上げる。
アイルランド系米国人が通うバーはマンハッタンに100軒以上あるが「サッカーは宗教だ」と銘打っているのはここ「ネバダ・スミス」だけだ。
欧州での試合が中継される平日の午後、薄暗い店内には約400人の白人男がひしめき合い、計8台のテレビ画面と大型スクリーンに目を凝らす。
満員電車並みのため身動きが取れない。
陽気に騒ぐ米国のほかのバーとは違い「神聖な儀式」でも見ているような独特な雰囲気がある。
ゲームへの集中度がものすごく、目を血走らせる若者もいる。
12年前に北アイルランドから移住したマネジャーのブラント・マッカラックさん(38)は「米国のサッカーファンにとって、ここはわが家のようなものだ」と言う。
米国の通常のテレビ番組では中継されない試合を観戦し、サッカー談義に熱中できる。
昨年9月の米中枢同時テロで崩壊した世界貿易センタービルの現場から約3キロ。
ニューヨークの消防士にはアイルランド系が多く、近くの消防署に所属する常連客の消防士13人がテロで犠牲になった。
哀悼の意を込めて、スタッフのポロシャツに「2001年9月11日」と縫い込み、11月には客からの募金やチップ、スタッフの給与など計2万5000ドルを消防署に寄付した。
「ビッグゲームになると、店に入り切れない客が路上に列をなす」という少数ファンの「聖地」では、今回のW杯全試合の中継を見ることができる。
このため一帯は未明や早朝から大騒動になりそうだ。
「大変でしょうが、楽しみでしょう」と聞くと、マッカラックさんは「どうかな。
実は米国に長くいるうち、最近はサッカーより野球やアイスホッケーのほうが面白くなってきたんだ」とニヤリとした。
(ニューヨーク共同)
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