06/06 06:42
今回のワールドカップ(W杯)で世界中のファンが最も待ち望んでいた世界の司令塔、ジダン(29)=フランス=がまだピッチに姿を現していない。
開幕直前に左太ももを痛めセネガルとの開幕戦はベンチ。
6日夜のウルグアイ戦も先発はなさそう。
“主役"が舞台に上がるのはいつか。
「一刻も早くピッチに戻りたい」。
0-1の番狂わせとなったセネガル戦の直後。
ジダンの表情は、紅潮していた。
開幕5日前の韓国との親善試合で痛めた左太ももは、ボールを使った軽い練習をできるまでには回復している。
しかしウルグアイ戦の前日練習にジダンの姿はなかった。
ジダンのテクニックは現在、間違いなく世界最高だ。
戦術眼、足さばき、そして芸術的とさえ言えるスルーパス…。
前回優勝チームのデシャン主将は「ジズー(ジダンの愛称)はどんな複雑な局面でも単純にしてしまう」と舌を巻く。
魅力はそれだけではない。
前回決勝のブラジル戦での2得点。
ジダンは「あれで人生が変わった」と言う。
人種融合の象徴とされたフランス代表の中でもアルジェリア系移民の子、ジダンの存在はいつも別格だ。
先のフランス大統領選では「移民排斥」を訴えたルペン候補が躍進すると「あれはフランスの価値に反する。
これは政治を超えた問題」と主張。
ジダンの言葉だから重みがあった。
「何か思いつくと同時に口が動く人もいるけど、自分はそれができない」。
口数の少ないジダンが、ジレンマと闘っている。
フランスは連敗すればW杯連覇どころか決勝トーナメント進出も厳しくなる。
「今の自分にはこれ以上望むものはない。
今回のW杯は勝利だけのためにプレーする」と語っていたジダンの歯がゆさは相当なものだろう。
チーム医師は「第2戦の出場も不可能ではない」とも言うが「ジダンほどの選手は、本調子でなければ出るべきではない」(フランス・サッカー連盟シモネ会長)と“ジダンの出番"をめぐる論議さえ起きている。
国民的英雄だけに、無理はさせられないとの意見が主流だ。
「ジダンがまともにプレーしないまま1次リーグ敗退となったら大変な騒ぎだろうな」と母国の様子を心配するのはフィガロ紙のデシュバリエ記者。
テレビ局TF1のペロネ記者は「出場させてけががひどくなったら何にもならない」と言いつつ「0-0で終盤までもつれたら切り札として出るかも」と期待と不安を込めて話した。
(釜山、共同)
記事一覧