06/07 12:05

「最近、ろくなことがない」。
サッカー・ワールドカップ(W杯)の開幕試合セネガル戦で「歴史的敗北」を喫し、続くウルグアイ戦も引き分けたフランス代表を見つめるパリっ子が口々につぶやいた。
ジダン負傷、アンリ退場…。
近年躍進が目立ったテニスの全仏オープンでも6日、フランス全選手が姿を消し、街角のカフェでは「国家像の崩壊」といった議論も交わされた。
主要紙は「シラク大統領と支持を二分するのが当然」とされた社会党ジョスパン前首相が移民排斥主義の極右、国民戦線(FN)のルペン党首に敗れ世界に衝撃を与えた4月の大統領選第1回投票になぞらえ「雷に打たれた」「油断から不覚をとった」と評した。
4年前の地元開催W杯と2年前の欧州選手権に優勝し、アルジェリア系のジダン、セネガル出身のビエラ、ガーナ生まれのデサイーと国際色豊かな代表は「自由、平等、博愛」の国家原理を体現したとまで絶賛されていた。
大統領選決選投票を前に「反極右」で結集した全国計130万人のデモ隊の先頭で、左派「緑の党」のマメール代表は「ジダンか、ルペンか」と連呼。
ジダン本人も左派が無料配布したビデオで「差別は良くない」と朴訥(ぼくとつ)に語って、極右の進出阻止に一役買った上、5月下旬に欧州チャンピオンズ・リーグの決勝で劇的なゴールを決め、スター性をさらに印象付けた。
圧勝したシラク大統領は再選後の欧州連合(EU)の会議で「米国の一極主義に異を唱えてみせる」と豪語したが、翌週のブッシュ米大統領との会談では「わが国の方針はすべて米国と同じ」とトーンダウン。
動員わずか5000人にとどまった「反米デモ」に対しては「彼らはマイナー派にすぎない」とこき下ろした。
「せめてサッカーは…」と、シャンパンを用意した群衆は王者の不調にがくぜん。
旧植民地セネガルからの移民が狂喜する姿に舌打ちも聞かれた。
パリ近郊に住む教師アルメルさん(31)は「サッカーと政治や社会問題を混同したら危険よ。
ボロボロになるまで頑張らされる選手が気の毒」と警鐘を鳴らす。
3月末の英国リーグ終盤で負傷し、W杯欠場を強いられたピレスもスペインからの移民家庭の出身だが、5日付フィガロ紙で「プロ・リーグ前にけがをするよりW杯前の方が良い。
フランスじゃなく、チームが給料をくれるんだから」とクールな発言をしている。
(パリ共同)
記事一覧