06/19 06:45

安貞桓が決勝ゴールを決めた瞬間、スタンドは大きく揺れた。
1点をリードされながら、最後まで攻勢をかけた韓国チームの執念もさることながら、スタンドの雰囲気が勝敗にかなりの影響を与えた。
公表された観客数は3万8588人。
1次リーグの3試合より、1万人以上も少ない数だ。
しかし、この日のスタジアムには、人数の少なさを感じさせない、濃縮された熱気があった。
韓国|イタリア戦が行われた大田スタジアムは、ピッチとスタジアムの距離が近い、サッカー専用スタジアムであったからだ。
韓国10都市のスタジアムのうち、7つまでがサッカー専用(日本は3)である。
ところが韓国代表の1次リーグ3試合は、サッカー専用スタジアムより多くの観客を収容できる陸上兼用のスタジアムで行われた。
一方、世界の注目がより集まる決勝トーナメントは、韓国のサッカーインフラの良さを示すため、専用スタジアムで行うことになっていた。
これに対し韓国代表の試合も、ホームの利点を生かすため、すべて専用スタジアムでやるべきだとの意見は根強くあった。
大田スタジアムの異様な雰囲気の中、イタリアの選手は冷静さを失っていった。
そして奇跡が起きた。
サッカーインフラを誇示したスタジアムは、韓国に思わぬ幸運をもたらした。
(大島裕史=ノンフィクションライター)
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