06/29 17:35
ペレはロナウドの「心」が心配だった。
けがそのものは治っても、元のように強い気持ちを取り戻せるのか。
ひざの靱帯(じんたい)を2度にわたって断裂し、代表から約2年半も遠ざかった天才ストライカーをペレは、1966年大会の自分と重ね合わせ、思いやった。
ブラジルの「王様」ペレと、30日の決勝でドイツと戦うロナウドは「王国のエース」の心のきずなで結ばれている。
ワールドカップ(W杯)に4度出場し、そのうち3度優勝したペレにとって、66年大会は最悪だった。
ポルトガル戦で相手の悪質なタックルに倒れ、ひざを負傷。
準々決勝進出を逃したうえ、その後3カ月間プレーできなかった。
「最悪の時期だった。
再びサッカーができるのか、不安にかられ、ものすごく落ち込んだ」そこからペレは立ち直り、29歳で迎えた70年大会で、3度目のW杯優勝をカナリア軍団にもたらした。
昨年10月、ペレはイタリア・ミラノのロナウドの自宅を訪ねた。
25歳のストライカーに、こう言った。
「わたしも66年大会は大きなけがをして『もうおしまいだ』と思った。
でも次の70年大会は、南米予選から最高のプレーができた。
本番も絶好調だった」「君のけがもこうして治ったし、悲観的に考えることはない。
前回大会よりも、素晴らしい大会になることだって十分にある。
前向きに考えることだ」ペレは、ロナウドがサンパウロに帰ってくると会い、ブラジル代表がポルトガルに遠征すると、電話を入れた。
4年前、フランスとの決勝の当日、ロナウドは発作を起こし、いったんは欠場を決めながら、強行出場した。
全く精彩を欠き、試合は0-3の完敗だった。
ドイツとの決勝は、ロナウドにとって、この4年間に起きたすべての悪夢を振り払う機会でもある。
サッカーを「美しいゲーム」と呼ぶ「王国」では、ゴールを生み出すストライカーは特別な存在だ。
ブラジルのエースの「心の痛み」がだれよりもよく分かるペレは、「彼は決勝の舞台にたどり着くまで、非常に注意深く戦った。
もう、何も心配することはない。
自分が偉大な選手であることを証明する機会だ」と期待を寄せる。
ロナウドは準決勝での得点でW杯通算10得点となり、通算12得点のペレに次いでブラジル代表歴代2位になった。
「(決勝で)ペレを抜きたい。
そうすれば僕らは世界王者になれるね」と笑った。
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