07/01 00:41

背後のネットが、2度も揺れた。
ここまで6試合で1失点。
鉄壁を誇ったGKカーンをかすめて、ボールはゴールに吸い込まれていった。
その手から、栄冠がすり抜けるように…。
両チーム無得点の後半22分、リバウドの低い弾道のシュートを抱え込んだはずだった。
だが、ボールはこぼれ、走り込んだロナウドの前に転がった。
「1つのミスが、すべてを壊してしまった」。
悔やみ切れない痛恨のプレーとなった。
さらに12分後。
右からのクロスをリバウドがスルー。
この動きに一瞬、惑わされた。
背後にいたロナウドへの反応がわずかに遅れ、決定的な2点目を許した。
鬼気迫る形相で仲間を鼓舞し、絶体絶命の窮地を何度も救ってきた男は、終了を告げるホイッスルを聞くと、無言で手袋を外した。
しばらく、ゴールポストに寄りかかり、W杯の名残を惜しむかのようにそこに座り続けた。
かつての名GKで、あこがれの存在だったマイヤー・GKコーチ。
2人3脚で決勝まで上り詰めたが、師が成し遂げたW杯優勝までは手が届かなかった。
大会中に33歳になった世界最高のGKは「できれば代表に残りたいが、今夜はまだ先の事は考えられない」。
試合後、右手小指と薬指には包帯が巻かれていた。
後半7分の接触プレーで負傷したそうで、微妙に手元を狂わせたのかもしれない。
「ゲルマン魂」を体現するようなプレースタイルは、まさしくドイツの顔だった。
地盤沈下が言われ続けた伝統国を、ここまで導いた功績は計り知れない。
だが、黄金のトロフィーを高々と掲げることは許されなかった。

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