7月20日21時05分
挑戦し続けて26年 井村コーチ、念願かなう

練習ではいつも、関西弁で怒っていた。外からは「鬼」に見えた。だから、井村コーチは「鬼の目にも涙、なんて書いたらあかんで」と言いながら、泣いていた。26歳の立花は小学6年生から、24歳の武田は中学1年生から教えている。その2人でデュエット優勝という、日本の水泳史上に残る快挙を達成した。
シドニー五輪は善戦したが、狙っていた金には届かなかった。立花も武田も、物足りなさを感じていた。「その2人の思いを受けて立たないといけない」。2人のためにコーチ人生のすべてを集め、必死で考えた先に、意表をついた新しいシンクロ像があった。
天理大を卒業した2年後の1975年、第2回大会から代表チームにかかわってきた。「一番になったことがないから、挑戦者だから、面白い。普通の選手とコーチでも、ここまで来られた」。世界一への渇望と負けん気、そして独創性が、立花ら教え子を引っ張った。
自らを「黒幕」という。「演じるのは選手。でも中身は全部わたしが決める。わたしはなくてはならない人」。小さな目がいたずらっぽく笑った。指導歴は、日本シンクロの挑戦史と゛同調″する。「黒幕」が世界のトップに挑み続けて、26年の歳月がたっていた。

戻る