08/30 15:05

大歓声に包まれて、バルディニがゴールのパナシナイコ競技場に姿を見せる。
2時間10分55秒。
マラソン発祥の地でのレースを征服したのは、33歳のイタリア人だった。
「マラソンの原点で勝てた。
信じられない気分だ。
素晴らしい」。
興奮が収まらない。
「イタリア、イタリア」と連呼する観衆に向かって何度も両手を突き上げた。
世界選手権では2大会連続3位。
豊富な経験と実績に基づく勝負勘が武器だ。
上位集団でレース展開を見ながら、勝機を探る。
デリマの独走にも焦りはなかった。
「自分がラスト4、5キロに強いということは分かっていた」38キロ付近でデリマを追い抜き、ゴールに向かって突き進んだ。
デリマが遭ったアクシデントにも「それがなくても、抜く自信はあった。
わたしの金メダルに問題はない」と意に介さなかった。
レース前、日本の関係者が一番警戒していたのがバルディニだった。
暑さと起伏に富んだ難コース。
似た条件で争われたソウル五輪を制したのがイタリアのボルディンだったからだ。
16年の時を経て、勝負強さを受け継いだ自信家は、母国に歓喜と今大会最後の金メダルをもたらした。

記事一覧