家族に包まれ初の五輪 オグシオの小椋選手
コートに立てず、ラケットが握れないほどのショック。バドミントン女子ダブルスの人気ペア「オグシオ」への期待という重圧に負けそうになったとき、小椋久美子選手(25)を包んでくれたのは家族だった。10日、感謝の気持ちを込め、初めての五輪に臨む。
「いいね田舎は。人に会わなくていいから」。2006年夏、三重県川越町の実家に帰省した小椋選手は姉由美子さん(28)の前でつぶやいた。
同年春、国・地域別対抗戦の女子ユーバー杯が行われた東京体育館には1万人が詰め掛けた。オグシオが勝てば4強入りの場面だったが、オランダに逆転負けした。
小椋選手は敗戦の責任を背負い込んだ。コートに立つだけで目まいや吐き気に襲われ、ラケットを握ると手が震えた。実家に帰り、自転車で近所を当てもなく走った。
小学2年のとき、由美子さんが通っていたクラブでバドミントンを始め、夢中になった。休憩時間を切り上げ、コーチや姉に「打って」とせがむ。友達の誕生日会や地域のクリスマス会でも練習は休まなかった。
腰痛に苦しんだ高校時代。苦しいリハビリに耐え、痛み止めの注射を打って試合に出たこともある。「つらければやめてもいい」と声を掛けた母光江さん(49)に、小椋選手は「こんな痛さはみんな我慢している」と言い切ったという。
それほど好きだったバドミントンで娘が苦しむ姿を見て、光江さんは「まさかそんな弱いところがあるとは思わなかった」と言う。
ユーバー杯の後、由美子さんは妹に「頑張れ」と言えなくなった。関係者やファンの期待は大きく、重圧がのしかかる。人気ペアとして戦い続ける妹の気持ちが痛いほど分かったからだ。
今年の正月を実家で過ごした小椋選手。由美子さんと買い物に出掛け、一家で近所の神社にお参りした。「お世話になった人たちに恩返ししたい」。家族に伝えた北京への決意だ。(北京、共同)
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