｢競い合えうれしい｣ﾏﾏでは銅､観客拍手

【北京9日共同】胸に輝く5大会連続のﾒﾀﾞﾙ｡表彰台の谷亮子選手(32)はほほ笑んだ｡｢5回も五輪で競い合えたことをうれしく思う｡世界中の選手たちに感謝したい｣｡最後は豪快な一本勝ちで女王の風格を見せた｡誰もが期待した｢金｣ではなかったが｢ﾏﾏでの銅｣に観客は大きな拍手を送った｡

3連覇の夢が破れたのはﾙｰﾏﾆｱのﾄﾞｩﾐﾄﾙ選手と対戦した準決勝｡なかなか組み合わない展開が続く中､谷選手にだけ指導がついた｡当惑の表情で思わず副審を見る谷選手｡残りは30秒｡観客はﾋﾟﾝﾁに息をのむ｡｢頑張れ亮子｣と書かれた日の丸が揺れた｡

谷選手は最後まで取り返せなかった｡何度もｼﾞｬﾝﾌﾟして喜ぶﾄﾞｩﾐﾄﾙ選手｡谷選手は放心したような遠い目をし､そして下を向いた｡

ｽﾀﾝﾄﾞで応援した父田村勝美さんは身をこわばらせ､首を何度も横に振った｡｢もっと早く攻めるべきだった｣｡表情に無念さがにじんだ｡

続く3位決定戦｡ﾛｼｱ選手に払い腰で勝ち銅ﾒﾀﾞﾙを決めると､会場は大歓声に包まれた｡礼を終え､手を挙げる谷選手｡目を潤ませて会場を去った｡

｢全力を出したのでうれしい｣｡試合後のｲﾝﾀﾋﾞｭｰに答える谷選手の表情はもう､さばさばしていた｡｢応援してくれた方に感謝の気持ちでいっぱい｣

勝美さんは｢調子はｱﾃﾈの時より上｡負けたのが不思議なぐらい｡攻めの時期を間違った戦略ﾐｽだろう｡いい経験になったんじゃないか｣｡最前列で声を張り上げたﾄﾖﾀ自動車応援団長の内田太さん(27)は､3位決定戦を制し､ｽﾀﾝﾄﾞに手を振る谷選手を見て｢感謝をいつも忘れないところが素晴らしい｡お疲れさまのひと言です｣とたたえた｡

08月09日(土)23:25

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