語り継がれる爆撃の記憶 反日強い重慶、日本応援も
サッカーの日本チームは中国で試合に出場するたびにブーイングを浴びてきた。2004年のアジア・カップや今年2月の東アジア選手権で“反日応援"の舞台となった重慶市は、市民に日中戦争中の「重慶爆撃」の記憶が今も残り、反日感情が根強い。だが四川大地震で日本の緊急援助隊の活動を目にして、対日イメージが好転し、応援する若者も出ている。

「日本は憎い、許せない」。16歳で旧日本軍による無差別爆撃に遭い、今も顔に傷あとが残る張忠福さん(84)は日本への反感を隠さない。自宅に爆弾が落ち、左耳の鼓膜が破れて障害者に。仕事に就けず「日本に復讐(ふくしゅう)したい」と軍隊に入り、ミャンマーなどで戦った。現在は日本政府に賠償などを求める「重慶爆撃訴訟」に参加、「子どもたちにこの歴史を語り続けている。日本は謝ってほしい」と訴えている。

張さんの反日感情は激しいが、重慶では珍しくない。それを最も明確に示したのが04年7月のアジア・カップだった。会場では日本の選手やサポーターに激しいやじが飛び、試合後はガソリンスタンドが日本車への給油を拒否、百貨店では日本製品が撤去された。

対日ブーイングは中国の観客の「マナーの悪さ」を示すにすぎないとの声もあるが、アジア・カップを観戦した重慶大大学院生の杜輝さん(23)は「ドイツだって歴史問題から試合会場で批判を受けることがある。日本批判も当然だ」と話す。

重慶市サッカー協会の許恩悟さん(25)は「アジア・カップの試合では中国人の反感が表れた。北京五輪でも同じことが起きるかもしれない」と心配する。

一方、5月の四川大地震の際「国際緊急援助隊の活動を見て日本の印象が大きく変わった」と話すのは、杜さんの知人の大学院生、牟善忠さん(27)。アジア・カップ当時は「靖国問題などを抱え、マイナスばかりだった」日中関係が、途絶えていたトップ会談の実現などで最近好転し始めたことも影響している。「日本選手を歓迎したい。国の枠を超えてアジア人として応援したい」と考えている。(重慶、共同)

08月06日(水)18:25

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