02/12 08:04

この日の1回目、通算の3回目の滑りで勝敗の行方は決まった。
ツェゲラーが3回戦で打ち出した44秒296は、ハックルが前日の2回戦で出したトラック記録44秒494を大きく上回る新記録(直後にプロックが更新)。
ゴール後、ごぶしを握りしめてガッツポーズを作るツェゲラーの表情に、金メダルに近づいた自信がにじんだ。
追いつめられたハックルは3回戦を44秒487で滑った。
前日の自己ベストを更新したが、宿敵との差はこの時点で0秒232。
1000分の1秒を争うリュージュでは、逆転不可能な大差がついた。
最終の4回戦。
最終滑走者としてツェゲラーがゴールに飛び込んだ瞬間、冬季五輪の個人種目として史上初の4大会連続金メダルの夢は消えた。
だが、レースを終えていたハックルは、宿敵の背に祝福の拍手を送った。
「一番強い選手が優勝したんだ。
2位に不満はない。
周囲は4大会連続金メダルなんて言っていたけど、そんな五輪の歴史なんて全く興味がない」と言い切り、悔しさはみせなかった。
ドイツ・バイエルン州の小さな町ベルヒテスガーデンに生まれ、近くのケーニッヒスゼーのトラックで、小学校の授業としてリュージュを学んでから、もう20年以上の時が流れた。
かてつの鋼のような体には、ビールの染み込んだ脂肪がつき、丸みをおびている。
そのホームトラックで開かれる来季の世界選手権に出場して、伝説の選手は長い競技生活にピリオドを打つことになりそうだ。

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