02/20 18:42

表彰台で、記者会見場で…。
心の底から自然とあふれ出る涙を、こらえることはできなかった。
「夢がかなった。
ものすごいことだわ」。
新種目の女子ボブスレーで初代女王に輝いたのは、米国「B」チーム。
パイロット(操縦役)のジル・バッケン選手(25)の横でスタートの時にそりを押す役目のブレーカー、ボネッタ・フラワーズ選手(28)は、冬季五輪では初の黒人金メダリストという栄誉と感激も重なり、感情を抑えることはできなかった。
「B」はもちろん、2番目の代表を意味する。
そんなチームが無欲の勝利をつかんだ。
今季はドイツの2チームが圧倒的な強さを発揮。
ワールドカップ(W杯)8戦では、この2チームが優勝をすべてさらっていた。
今大会も、ドイツの牙城(がじょう)を崩すのは不可能と思われた。
だが、結果はドイツAに0秒30と大差を付けての完勝した。
好タイムには、フラワーズ選手が大きく貢献している。
アラバマ大時代は、走り幅跳びの選手で「五輪と言えば、夏の大会を目指していた」ほど。
ボブスレーは、選手が自分の力で加速できるのはスタートだけ。
スタートで一気にスピードに乗ることが勝利への近道となる。
陸上の元米国代表の脚力とバネを持つフラワーズ選手の走力と、バッケン選手の巧みな操縦が見事にかみ合った結果が、金メダルとなった。
わずか4カ月前、フラワーズ選手は、五輪出場をあきらめかけていた。
2年前、米代表のパイロット、ボニー・ワーナー選手に誘われてボブスレーを始めたが、そのワーナーさんと、昨年10月、パートナーを解消した。
記者会見でその話に及ぶと「ごめんなさい」とひと言で質問を遮った。
落ち込んでいた時、1本の電話が鳴った。
「わたしのそりを押してくれない?」。
ブレーカーを探していたバッケン選手のこの言葉がこの日の歴史を刻む勝利の、扉を開けた。
大会前、米国Aチームの陰に隠れ、話題にすらならなかった「B」の2人。
「だからわたしはここにいるのよ」。
まさに奇跡のドラマを演じた。

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