02/24 16:46

「自分らしいレースで力を出し切れた」。
23日のショートトラック女子1000メートルで7位に入賞した田中千景選手(28)。
長野では「悔しさだけが残った」五輪だが、この日は満足しきった笑顔だった。
スケート人生に決着をつけようとするかのように果敢に先頭に出た。
最後の一周、決勝まであと一歩のところで抜かれ3位。
柏原幹史コーチは「よくやった」と言うように、うんうんとうなずいた。
長野県茅野市の出身。
3歳から田んぼに氷を張ったリンクで滑り始めた。
「町内大会では『全部賞状持っていっちゃう』と言われたものです」と母のフサエさん(55)。
高校まで長野県のトップで負け知らず。
東京女子体育大に進んで最初の転機が訪れる。
スピードスケートの練習の一環で「嫌々やっていた」ショートトラックで素質を認められた。
大学2年の冬、監督やコーチが「ショートに専念しないか」と勧めた。
だが気持ちは定まらなかった。
両親に相談すると「ショートで頑張ってみれば」。
その理由をフサエさんは「スピードでは伸びも止まっていて、かわいそうだった。
長野五輪もあるし、はっきり決めた方がいいと思った」と振り返る。
「勝負してみよう」。
大学3年のとき代表チームの柏原コーチの門をたたき、めきめきと力をつけた。
小学校からの夢だった五輪の舞台。
長野ではメダルを狙った3000メートルリレー決勝で、カナダ選手と接触。
「あっ」と思った瞬間、転倒していた。
リンクから出た後、涙が止まらなかった。
「わたしが悪いんでしょうか」。
コーチは「ついてなかっただけだ」と答えるのが精いっぱいだった。
長野が終わり、高校の体育教諭となった。
「ソルトレークはどうする」。
コーチに聞かれ「もう一度目指します」。
「やるなら中途半端は駄目だ」。
東京のコーチ宅に下宿、再びスケート漬けの毎日を送ってきた。
「メダルには届かなかったけど、やってきたことは無駄じゃなかった」。
ソルトレークシティーから帰ったら、4月から教育の現場に戻る予定だ。

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