ロシアのモストボイ
超満員の観衆は試合前から敵地に乗り込んだ1人の男にブーイングの集中砲火を浴びせた。
2月9日のスペイン1部リーグ、バレンシア-セルタ。
主役はセルタで「皇帝」と呼ばれ、奔放な攻撃を操るロシア代表MFモストボイだ。
それだけ、1本のパスで勝負を決める33歳の職人技は異彩を放っている。
冷静に戦況を把握し、ワンタッチでゴールを陥れるプレーは、あのクライフ氏も「ピッチの芸術家」と称賛したという。
ソ連時代から10年以上も君臨する代表チームでは現在、守備的MFの位置を任され、ツボを心得た勝負師の才覚で攻守をコントロールする。
16歳でロマンツェフ氏(現ロシア代表監督)に見いだされ、スパルタク・モスクワに入団。
1991年旧ソ連解体後、海外進出の先駆けとして、あこがれのエウゼビオが在籍したポルトガルのベンフィカに移籍した。
「当時の自分にすれば、レアル・マドリードやバルセロナより偉大なクラブだった」と回想する。
素顔は天才肌にありがちな気難しい一面も。
96年から在籍するセルタでは定例会見をキャンセルする“常習犯"。
代表でもクラブでも、主審の判定に激怒してはイエローカードを受ける「警告王」でもある。
もっとも、セルタで人気は絶大だ。
この秋にはサポーター有志の呼び掛けで銅像も建立される予定。
「光栄なことだけど、今度はロシア代表でも何かを成し遂げたいね」。
ワールドカップは2度目の舞台。
「日本戦?5バックでも8バックで来ても得点できる」と不敵に笑った。

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