メキシコのブランコ
北中米の雄と呼ばれた時代も今は昔。ワールドカップ(W杯)最終予選で敗退の危機にまで立たされたメキシコの前評判は芳しくない。そんな下馬評を覆すとすれば、FWブランコ(29)の活躍が不可欠だ。
何かをやってくれそうな雰囲気が漂っている。1998年フランス大会では、両足の間にボールを挟んでDFの間を突破。曲芸のようなカニばさみドリブルを披露して「空中ブランコ」の異名が付いた男が、この予選でもアステカの大地を熱狂させた。
W杯予選準決勝リーグのトリニダードトバゴ戦で、相手の悪質なファウルを受けて右ひざ十字靱帯(じんたい)を断裂。長期離脱を余儀なくされた。ブランコを欠いたメキシコは、最終予選の前半戦で6チーム中5位と追い詰められた。
2001年9月、約1年ぶりに代表のピッチに戻った。0-1でリードを許したアウエーでのジャマイカ戦。後半途中出場で2ゴールを挙げると、一気に波に乗った。最終戦を含め、後半戦4試合で5得点と大暴れし、W杯への切符をもぎ取った。
奇跡的な活躍で一気に国民的英雄となるが、予選後には同国サッカー協会との確執で一時は代表引退を表明。気性の激しさで、度々グラウンドの外を騒がす問題児でもある。
アギレ監督らの説得で「自分のサッカー人生とメキシコにとっても、出場するのが最善」と引退を撤回。何かと話題を振りまく“エンターテイナー"が、メキシコの浮沈を握っている。


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